その後に起きたことは、夏目初美と工藤希耀が去った後なので、もちろん知るよしもなかった。
病院を出るとすぐに、希耀は初美の表情を窺いながら、小声で尋ねた。「初美、機嫌悪くなった?関係ない人たちと争うことはないよ。いわゆる血縁関係だからって、彼らや彼らの言動を重要視する必要はないんだ」
「この世で親しいかどうかは、血縁関係だけで決まるものじゃないわ。私は誰が私に優しくしてくれて、誰が私を大切にしてくれるか、それに応じて私も相手を大切にすればいいと思う。それで十分よ」
初美は彼が眉をひそめ、隠しきれない心配の表情を見せているのに気づいた。
思わず笑みがこぼれた。「ううん、彼らのことで機嫌を悪くしたりしないわ。彼らにはもうずっと前からその資格なんてないもの。私が彼らに対して少しでも丁寧に接したように見えた?最初に呼びかけたのは、ただ礼儀としてよ。でも明らかに彼らはそれを必要としていないから、今後は基本的な礼儀さえ省くわ」
「それに、いとこと強気な夫が私を守ってくれているじゃない。本当は相手を言い負かす言葉がたくさんあったのに、あなたたちの『気にするな、俺が出る』っていう態度のせいで、全然出番がなかったわ。もったいない!」
希耀は頷いた。「それならよかった。ずっと黙っていて、表情も暗かったから、怒ったり悲しんだりしているのかと思った」
初美は手を振った。「本当にそんなことないわ。考え事をしていただけ。他の二家は来ているのに、なぜ...双葉淑華さんは来ないのかしら?彼女は今、次郎叔父の会社で働いているんでしょう?だったら叔父さんの事故のことはとっくに知っているはず。叔父さんは彼女にあれだけ親切にしてきたのに、今まで一度も顔を見せないなんて、一体何に忙しいの?今この状況より大事なことがあるっていうの!」
希耀も実はさっきからこの問題について考えていた。
他の二家が来ているのだから、淑華が先に来なくても、少なくとも彼らと一緒に来るべきだろう。
しかし淑華が来たら、初美の機嫌を更に損ねるだけだろうと思うと、
彼女が来ないほうがいいとも思った。