それなら、譲ってあげるわ

ふと、彼女の口元に薄い笑みが浮かび、その端正な顔立ちには、どこか傲慢で自由奔放な気配がにじみ出ていた。

一挙手一投足が、まるで意図的に久保清森への挑発のようだった。

清森は視線を戻し、ゆっくりとプレートを上げた。「五千五百万」

その声が響くと、柔らかくも冴えた笑い声が皆の耳に届いた。「清森さんがそんなにこのダイヤの指輪を気に入ったなら、私が奪うのも野暮でしょうね」

壇上で司会を務める綾部子遠がカツンと一度ハンマーを鳴らした。「五千五百万、一回目」

「五千五百万、二回目」

「五千五百万、三回目」

「おめでとうございます。叢雲産業グループ会長の久保清森様が五千五百万円の価格で『恋の芽生え』ダイヤリングを落札されました」

その言葉と同時に、会場の空気がふっと緩み、来賓たちは揃って拍手を送り、礼儀として清森を祝福した。

「さて、最後のオークション品も同じく来賓の古川真雪様からの寄贈品です」

子遠が言い終わると、また一人のスタッフが一つのトレイを手にして壇上に上がった。先ほどと同様、トレイの上には赤い布がかけられていた。

その様子を見て、来賓の心には何かしらの予感が湧き上がってきた……

「この『永遠の絆』と名付けられた宝石ダイヤリングも、フランスの有名なジュエリーデザイナー、アドルフ・ディーン・ノーマン氏が自ら設計したものです……」

子遠の言葉は、間違いなく皆の心の中の予感を確かめるものだった。

かつて清森と真雪が結婚二周年記念日を迎えた時、清森は再び高額な費用でアドルフに依頼し、真雪へのアニバーサリーギフトとして宝石ダイヤリングをデザインしてもらった。

メディアもこの『永遠の絆』と名付けられた宝石ダイヤリングについて紹介し、清森の思いやりと妻への愛情を称えた。

「『永遠の絆』宝石ダイヤリングの市場価格は二億七千万円、競り開始価格は六千万です」

今回は、真雪が挑発の言葉を口にする前に、清森が自ら札を上げて値を上げた。「六千一百万」

壇上で司会を務めている子遠は視線を真雪に向け、軽く眉を上げ、まるで彼女にさらに値を上げるかどうか尋ねているようだった。

真雪は彼の視線を避け、手元の札をくるくると弄びながら、まるで興味がないふりをした。

子遠は彼女の意図を理解し、ハンマーを持ち上げた。「六千一百万、一回目」

「六千一百万、二回目」

「六千一百万、三回目」

「おめでとうございます。叢雲産業グループ会長の久保清森様が六千一百万円の価格で『永遠の絆』ダイヤリングを落札されました」

「皆様の温かいご支援に感謝申し上げます。特に今回のチャリティーイベントの最大の買い手となった清森様の寛大な入札に心より御礼申し上げます」

子遠は再び招待された来賓たちに感謝の言葉を述べ、壇を降り、イベントを終了した。

皆は清森に近づき、心に適った品を落札したことを祝福しようとしたが、彼の眉間に漂う冷たさを横目で見ると、思わず足を止め、自分が間違った言葉を言って彼の怒りを買うことを避けた。

それとは対照的に真雪は、清森の目に浮かぶ冷たさを全く気にしていないかのように、優雅に彼の前に歩み寄り、赤い唇に高貴で優雅な笑みを浮かべた。

「清森さん、最大の買い手になったことをお祝いするわ。あなたのパートナーも気に入ってくれるといいわね」

「パートナー」という言葉を口にした時、彼女の視線は清森の横に立つ夏目宣予に向けられた。

宣予は真雪の言葉を理解していないふりをして、口元の笑顔は相変わらず明るく輝いていた。彼女は熱心に挨拶した。「真雪、久しぶり」

「ええ」真雪は軽く頷き、そして再び黙って立っている清森に視線を戻した。

その視線に応えるように、清森も彼女を見つめ返した。冷たい冬の風のような、鋭く冷徹な眼差しには、どこか探るような光が宿っていた。