離婚前と離婚後、違いすぎじゃない?

すでに立ち上がっていた佐々木一嘉は、古川真雪の顔に浮かぶ驚きの表情に気づくと、軽く笑いながら説明した。「久保さんは撮影が始まってからずっと、バックステージであなたを見ていらっしゃいましたよ」

つまり、先ほどの撮影の間中、久保清森はバックステージで見ていたということ?

真雪は視線を一嘉に向け、少し眉を上げた。まるで「なぜ早く教えてくれなかったの?」と問うかのように。

「久保さんがスタッフに言わないようにと指示されたんです。収録中、あなたに余計なプレッシャーをかけたくないからって」一嘉はあっさりと、すべての責任を清森に押し付けた。

言い終わると、一嘉は清森が着実な足取りでスタジオに向かって歩いてくるのを見た。彼女は意味ありげに真雪に向かって微笑むと、簡単に清森に挨拶してから立ち去った。

「どうしてここに?」

真雪の質問に対し、清森は平然と嘘をついた。「ちょうどテレビ局に用事があって、君が番組を収録していると聞いたから、ついでに見に来たんだ」

彼の表情があまりにも落ち着いていたため、真雪は彼が本当にただ立ち寄っただけなのだろうと信じた。彼女は無関心そうに頷いた。「もう撮影は終わったわ。邪魔しないようにするね」

「いや……母さんが、君を家に連れて帰って夕食を一緒に食べたいって」

真雪は疑わしげに清森を見つめた。彼は何食わぬ顔で目を逸らしながら続けた。「今日は十五日だから」

久保家には、毎月十五日に家族全員が集まって夕食を共にするという決まりがあった。過去に清森と結婚していた三年間、真雪はこの家族の集まりを一度も欠かしたことがなかった。

けれど今は……もう離婚した身だ。そんな場に顔を出す意味があるのだろうか。

「清森、私たちはもう……」離婚したわ。

彼女の言葉が終わる前に、清森は一方的に彼女の手を取り、スタジオの外へと歩き始めた。

彼は彼女の前を歩き、背を向けたまま冷静な口調で言った。「たとえ離婚していても、家に帰って食事をするくらい、そんなに無理な頼みじゃないだろう」

確かに無理ではない。ただ……彼らはもう離婚しているのだ!

真雪の顔に浮かぶ葛藤の表情を見た清森は、彼女が断るのを恐れ、急いで秘書の唐田浩良(からた ひろよし)に化粧室から真雪のコートとバッグを取ってくるよう指示した。さらに浩良に真雪の車を彼女の家の駐車場まで運転していくよう頼み、自分は真雪を久保家まで送り、夕食後に彼女を家まで送ると言った。

真雪は清森のアレンジは余計すぎると思い、つい口を挟んだ。「自分で運転できるし、そこまでしなくても……」

「僕が送るよ。そうしないと、後でまた母さんに責められるからな」

清森の母親、白川悠芸は常々真雪を可愛がっていた。清森が真雪をないがしろにするのを見るたびに、清森を叱りつけていたものだ。

真雪がまだ反論しようとしているのを見て、清森は強引に彼女の手を取り、彼女に抵抗する余地を与えず、駐車場に着くと車に乗るよう促した。

真雪は清森を横目で見て、最終的には素直に車に乗り込んだ。

車内は暖房が効いていて暖かく、真雪は椅子の背もたれにだらりと寄りかかり、スマホをいじりながら、運転している清森を無視していた。

清森はスマホの画面に集中している真雪をちらりと見た。以前、二人が結婚していた頃、彼女が横に座っていると、いつも明るく話題を見つけては彼に話しかけていたのに。

今はただ、黙々とスマホを見ているだけ。

清森は思わずつぶやいた。「……離婚前と離婚後、だいぶ違うな」

「今日のインタビューはどうだった?」

静かな車内に突然、低く心地よい男性の声が響いた。真雪は数秒間呆然としてから、運転席に座っている清森が自分に話しかけていることに気づいた。

珍しく清森から話題を振ってきたことに、真雪はスマホを置き、興味深そうに彼の方を見て、自然な態度で答えた。「うん、まあ悪くなかったよ」