中島黙は古川真雪の言いよどむ表情から答えを知った。あの睡眠薬の瓶は前の客が置き忘れたものではなく、彼女のものだったのだ。
先ほど薬瓶を手に取った時、彼は軽く振ってみて、中の薬がすでに半分以上使われていることを感じ取っていた。
「睡眠に問題があるの?」
真雪は目を伏せ、軽くうなずいた。「うん、最近は少し良くなってきたけど」
「どのくらい飲んでるの?」
「五ヶ月ほど」
五ヶ月前、彼女は久保清森と離婚した。
黙は清森への不満を抑え込み、ソファから立ち上がると、表情に温かな笑みを浮かべた。
彼は手を伸ばし、親しげに真雪の頭を撫でた。「眠れないなら医者に診てもらったほうがいいよ。睡眠薬は長く使うと依存性が出るし、体にも良くないから」
以前と同じように、たとえ真雪が間違いを犯しても、黙は彼女を責めることはなかった。いつも優しく真雪の頭を撫で、この世で最も優しい声で彼女を慰めるのだった。
しかし、彼のこうした態度は直接叱るよりも彼女を苦しめた。
彼女は声を落とし、疲れた声で言った。「人に知られるのが怖いの」
彼女も心理カウンセラーに診てもらおうと考えたことがあった。しかし、もし彼女が心理カウンセラーに通っていることが発覚すれば、各メディアが彼女が久保清森との離婚のショックに耐えられず鬱病になったと狂ったように報道するだろうと思うと、どうしても躊躇してしまった。
なぜなら、いつも誇り高かった彼女は、自分の弱さを暴かれた後に、それを笑い種にされることを許せなかったからだ。
黙は両手を真雪の肩に置いた。真雪は思わず顔を上げて彼と目を合わせた。
彼の目には真雪がよく知る包容力と愛情が溢れていた。「真雪、誰もあなたを笑ったりしないよ。もし笑う人がいても構わない。先輩があなたを守るから」
真雪が黙を知ってから九年。この九年間、彼は兄のような存在であり、良き師であり、そして親友でもあった。
だから、全世界に自分の弱さを見透かされることを恐れながらも、彼女は彼の前では何の負担もなく自分のすべての弱点をさらけ出すことができた。彼女の彼に対する信頼は深く、そして揺るぎないものだったからだ。