「そういえば、朝食の後に時間ある?」
古川真雪は顔を上げて中島黙をちらりと見て、頷いた。「うん、どうしたの?」
「一緒に物件を見に行かないか」
「物件?引っ越すの?」
「家を追い出されたんだ。家を買わなければ、路頭に迷うことになる」少し間を置いて、彼は眉を上げて冗談めかして言った。「それとも真雪が僕を泊めてくれるのかな?」
真雪は口の中の食べ物をゆっくりと噛み、飲み込んでから、苦笑いしながら答えた。「先輩、一体どんな大罪を犯したの?家を追い出されるなんて」
「分からないだろうけど、これは先輩の意地というものさ」
真雪は口をとがらせ、彼の言い訳に何もツッコまなかった。
「分かったわ。じゃあ朝食の後に物件を見に行くのに付き合うね」
真雪が頷いて承諾するのを見て、黙は満足げに口角を上げた。「こういう素直な後輩が好きだよ」
黙が買おうとしている家は、真雪の家から歩いてたった15分、車なら5分の距離だった。
彼はすでに販売員と約束していたので、二人が小区に到着すると、販売員はすでに二人を待っていた。
「中島さん、こんにちは。ご要望に沿って、適切な物件を見つけました。
この物件は、建物の販売開始時に元の所有者が購入したものです。リフォーム中に男性所有者が海外の会社からオファーを受け、検討の末、家を売って海外移住することを決めました。
そのため、この物件はすでにリフォーム済みですが、誰も住んだことがない全く新しい家です。ご心配は無用です」
販売員は二人を先導しながら物件を案内し、家の経歴を簡単に説明した。
三人が家の前に到着すると、販売員は暗証番号ロックに一連の番号を入力し、ドアが自動的にロックを解除した。彼はドアノブを回してドアを開け、先に入り、そして脇に立って二人を招き入れた。
家は真雪の家と同じメゾネットタイプだったが、面積は真雪の家ほど広くなく、5LDK、4バス、3バルコニーだった。
販売員は家の間取りについて説明し、二人を上下階に案内した。
黙は横目で隣の真雪を見て、尋ねた。「どう思う?」
「いいと思うよ、買っていいんじゃない」
「うん、じゃあ買おう」黙は頷き、販売員に言った。「この物件にします。よろしくお願いします」