新年から四日目、内田麟空のデザイン図とモデルがついに完成した。
古川真雪と久保清森はそろって麟空の作業室を訪れ、二人ともデザインされた成果物に大変満足していた。これからは麟空のチームがモデルとデザイン図に従って、レストランの工事を進めることになる。
レストランは広く、二階建ての建物であるため、麟空は暫定的に工期を二ヶ月と設定した。
一方、真雪はこの二ヶ月の間に従業員を雇い入れ、唐田浩良に頼んでレストランの許可証を取得する必要があった。
麟空とスケジュールや内装について話し合いを終えると、真雪は長居せずにすぐに立ち去った。
清森は前回と同様、適当な理由を見つけて麟空に別れを告げ、真雪の後を追うように一緒に出ていった。
前回の綾部久辰の新年会以来、真雪は清森からの電話に一切出ず、彼が訪ねてきても意図的に会わないようにしていた。
今回ようやく真雪に会えたので、清森は彼女を誘う機会を逃すまいと思った。「一緒に夕食でもどうですか?」
真雪は手で作業室のドアを押し開けると、冷たい風が吹き込んで、肩に垂れた長い髪が揺れた。
彼女は作業室を出ると、身に着けていたウールのコートをきつく締め、表情を変えずに清森を一瞥した。「もう約束があるの」
「忙しそうですね。じゃあ、今夜は夜食でもどうですか?」
「興味ないわ」
ここ数日の気温はさらに下がり、吹きすさぶ冷たい風が刃物のように顔を切りつけて不快だった。真雪は思わず足早に歩き始めた。
清森は彼女と並んで歩きながら、横目で彼女の冷淡な表情を見て、彼女の態度はこの夜風よりも冷たいと感じた。
真雪が自分の誘いを受け入れないだろうと予想した清森は、自然に話題を変えた。「レストランのシェフ、適任者は見つかりましたか?」
真雪はうなずいた。「ええ、いるわ」
「誰ですか?」
真雪は自分が気に入っているシェフ候補を清森に明かすつもりはなく、そっけなく答えた。「彼と話がまとまったら、正式に紹介するわ」
「わかりました。何か手伝いが必要なら、いつでも連絡してください」
「わかったわ。私、先に行くわね」真雪はうなずくと、大股で自分の車へと向かった。
清森の車は彼女の車のすぐ隣に停まっていた。彼が車の前まで来ると、真雪はすでに素早く車内に座り、エンジンをかけ、彼に手を振ることさえせずにアクセルを踏んで去っていった。