第144章:このカップルは部屋を借りたい

中島黙はポケットから携帯を取り出し、古川真雪に見えない角度で電源を切った。

最後に、真雪に声をかけた。「そうだ、携帯の電源を切っておいて」

真雪はお粥をすくって口に運びながら、不思議そうに眉を上げて尋ねた。「え?どうして?」

黙は説明せず、ただ頭を下げて箸を取り、少しおかずを口に入れた。「あまり質問しないで」

真雪は理解できなかったが、それ以上追及することもなく、言われた通りに携帯の電源を切った。

二人は素早く朝食を済ませ、簡単に荷物をまとめて出発したときには、すでに11時半になっていた。

稲瀬村は賀成市から車で2時間の距離にあった。黙が1時間車を走らせた後、稲瀬村まであと1時間の小さな町で停車し、そこから真雪と一緒にバスに乗り換えて稲瀬村へ向かった。

バスが稲瀬村に近づくにつれ、地形はますます辺鄙になり、道もでこぼこになっていった。

黙は元々話好きで、バスの中で隣に座ったおばさんと話しているうちに、稲瀬村に今住んでいるのはほとんどが年配の老人と留守番をする子供たちだと知った。

春節が近づき、外で働いている村人の多くが村に帰省して祝うため、最近になってようやく賑やかになってきたという。

1時間の道のりはとても揺れが激しく、到着したとき、二人は急いでバスを降りた。

小さく簡素なバス停には三輪車を運転する数人のドライバーがいた。黙は片手で二人のスーツケースを押しながら、横にいる真雪を見て言った。「ここにはホテルはなさそうだね。まず三輪車のドライバーに宿がどこにあるか聞いてみよう」

「うん」

二人は足早に一台の三輪車に近づいた。ドライバーは二人に向かって笑顔を見せ、少し訛りのある中国語で尋ねた。「どこに行きたいんですか?」

黙はドライバーに友好的な微笑みを返した。「こんにちは、宿を探しているんですが、どこか宿屋をご存知ですか?」

「この辺りに宿屋なんてありませんよ。でも民宿なら一軒ありますよ」

「そこに連れて行っていただけますか?」

「乗ってください」

二人は三輪車に乗り込み、ドライバーは興奮した様子で「出発しますよ!」と叫んでから、三輪車のエンジンをかけ、街中を走り抜けた。

三輪車は約15分走って、ドライバーが言っていた民宿に到着した。黙は料金を払ってから降りた。