彼女は不思議そうに振り返って、後ろに立っている久保清森を見た。「何かありますか?」
「外は暑いけど、室内のエアコンはちょっと冷えるね。ベッドを温めてくれるイケメンは必要ない?」
彼の唇の端には、かすかな悪戯っぽい笑みが浮かび、少し上げた眉には何気なく色気が漂っていた。
古川真雪は彼の手を振り払い、作り笑いを浮かべながら言った。「結構です、ありがとう」
「本当に要らない?無料だよ」
「ええ」
真雪は辛抱強く頷き、部屋に入った。ドアを閉めようとした時、突然清森が尋ねるのが聞こえた。「じゃあ、後で映画を見に行かないか?その栄誉を僕に与えてくれないかな?」
「気分次第ね」
「気分が良くないの?もし望むなら、君を楽しませることもできるよ。例えば、ベッドを温めるとか」
話題がまたベッド温めに戻ってきたようで、真雪は可笑しくなって白目を向け、清森に手を振って早く立ち去るよう促した。「すごく眠いの。起きたらまた遊びましょう」
清森は頷いた。「休んでおいで」
ドアを閉めると、彼のつまらなくて子供っぽい言葉を思い出し、真雪は思わず口元を緩めた。彼女はバスルームでシャワーを浴びた後、ベッドに倒れ込んで眠った。
目が覚めたときには、すでに夕方の6時になっていた。半日以上眠っていたことになる。
ベッドから降りると、彼女は突然、朝寝る前に清森が目覚めた後に一緒に映画を見に行こうと誘ったことを思い出した。
部屋を出ると、廊下の明かりがついていた。真雪は清森の部屋の前まで行き、礼儀正しくドアをノックした。
数秒後、ドアが開き、清森は目覚めたばかりの真雪を見た。彼女の顔にはまだ目覚めたばかりの迷いが残っていた。
彼は遠慮なく手を伸ばして真雪の頭を撫で、わざと彼女の髪を乱した。
真雪は眉をひそめて彼の手を払いのけた。「やめてよ」
「よく眠れた?」
「まあまあ。たぶん今夜は不眠になるわ」
清森は取り入るように顔を真雪の前に近づけた。「じゃあ、今夜は遅くまで付き合うよ」
真雪は笑うべきか泣くべきか分からなかった。これは彼が自分に付き合うのか、それとも自分が彼に付き合うのか。
清森は腕を上げて腕時計の時間を確認し、尋ねた。「一緒に夕食を食べて、それから映画を見に行かない?」
「うん、いいわ。先に部屋に戻って着替えてくるわ」