第353章:次回も良い値段で売れることを願う

久保清森の心に、なぜか一筋の緊張が生まれた。古川真雪がこの二つの指輪を拒否するのではないかという恐れだった。

しかし彼は自分の感情をうまく隠し、少しの不安も漏らさなかった。

「受け取ってよ。お小遣いがなくなったら売ればいいから」

彼は不真面目そうに笑いながら、冗談めかした言葉の中に、かつて二人が結婚した時に自分が特別に彼女のために作らせた指輪を受け取るよう真剣に説得する意図を込めていた。

彼の言い訳に真雪は思わず笑ってしまった。彼女はようやくゆっくりと手を伸ばして清森の手から二つの箱を受け取り、箱を開けて中に収まっている精巧な作りの、異常なほど輝く二つの指輪をちらりと見た。

「そうね、お金に背を向けるわけにはいかないわ。じゃあ、もらっておくわ。次回もいい値段で売れるといいけど」

彼女がついに受け取ったのを見て、清森は心の中でこっそりとほっとした。

「次回はないよ」彼の冗談めいた口調の中に、一筋の真剣さが含まれていた。

真雪は顔を上げて彼を一瞥した。彼の唇の端には優雅で狡猾な微笑みが浮かんでいて、まるで雲間から差し込む陽光のように、目がくらむほどの光を放っていた。

真雪は二つの指輪の箱をバッグに入れ、笑みを含んだ声で冗談めかして言った。「グループをしっかり経営してね。そうすれば私ももっと稼げるから」

「もちろんさ。叢雲産業は来月、桜ヶ丘市の海辺のリゾート村を買収する予定だ。その時、一緒に休暇を取って視察に行かないか」

「いいわね。もし社長様が私を連れて飛んでくれるなら、喜んでお供するわ」

清森は思わず笑みを漏らした。「女神を連れて飛べるなんて、僕の光栄だよ」

彼の言葉は、真雪に先ほど彼が投稿したあのマイクロブログを思い出させ、彼女の赤い唇の笑みはさらに明るくなった。

「私、先に帰るわ。あなたは仕事に戻って」

真雪が牛皮紙の袋を持って立ち上がるのを見て、清森もすぐに立ち上がり、提案した。「エレベーターまで送るよ」

「まあ、社長様に自ら送っていただくなんて、恐縮ですわ」

「女神をエスコートできるのは僕の光栄だよ」

そう言いながら、真雪の手から牛皮紙の袋を受け取り、気遣いよく彼女の代わりに持った。

二人は前後して清森のオフィスを出た。大谷若瑶と唐田浩良の二人は立ち上がり、笑顔で二人に軽く頭を下げた。「社長、お出かけですか?」