第373章:本当に好きに文句を言っていいの?

古川真雪は視線を戻し、ワイングラスを手に取って一口飲んでから尋ねた。「あなたは?この一年はどうだった?」

「離婚したばかりの頃は、生活に何かが足りないような気がしていた。周りの人が絶えず私の耳元であなたの話をするまで、私の後ろをついてくる小さな尾っぽがいなくなったことに気づかなかった」

久保清森が真雪に向ける視線は、泉のように穏やかで、その中には人の心を揺さぶる愛情が流れていた。

彼は手を伸ばし、真雪の耳元に垂れた一筋の髪を優しく耳の後ろに掛けると、続けて言った。「それから私はあなたを思い始めた。とても恋しくなった」

「真雪、ごめん。かつて僕はわがままにあなたを傷つけ、大切にしなかった。目が覚めた時に、やり直すチャンスをくれてありがとう。それから...愛している」

彼の澄んだ声は、山間を流れる小川のようで、清らかで自然で、騒がしさは全くなかった。

告白の言葉が彼の口から発せられると、それは純粋そのもので、他の華やかなものは何も混じっていなかった。

真雪の艶やかな桃花眼に感動の色が過ぎった。彼女は顔を横に向け、清森の熱心で情熱的な瞳と向き合った。

一瞬、彼女は彼の渦のように人を引き込む眼差しに陥りそうになった。

彼女は視線を戻し、軽く笑ってから茶目っ気のある口調で言った。「離婚一周年って、お互いに文句を言い合うものじゃないの?どうして告白になっちゃったの?」

冗談めいた言葉が、それまでの二人の間の温かく美しい雰囲気を一瞬で打ち砕いた。

清森はワイングラスを手に取って一口飲み、薄い唇に微かな弧を描かせながら、考え深げに言った。「文句?本当に好きなように文句を言っていいの?」

「うんうん」真雪は彼が真剣に何を言おうか考えている様子を横目で見ながら、わざとそっけなく言った。「随分言いたいことがあるみたいね」

清森は同意するように頷いた。「たくさんある」

「どんなこと?聞かせて?」

真雪はバーカウンターに肘をついて、手のひらで顎を支え、隣の清森から目を離さなかった。

彼女が清森を見る目には、何とも言えない感情が滲んでいた。その様子は、まるで...じっくり聞いてあげるわ、と言っているようだった。