第372章:どうやらあなたは私と膝を交えて話し合うつもりのようね

古川真雪がお風呂を済ませ、バスローブを着て階下に降りたとき、リビングには久保清森の姿がなかったため、彼女はダイニングルームへと向かった。

清森は足音を聞いて顔を上げ、真雪に微笑みかけた。「こっちに座りなよ。唐田秘書に君の好きなマンゴームースを買ってきてもらったんだ」

真雪は頷き、バーカウンターに近づいた。そこにはマンゴームース、赤ワイン、フルーツ、チョコレートが並べられていた。

「これは私と膝を突き合わせて長話するつもりね」

真雪はバーカウンター前のハイチェアに座り、隣でワイングラスに赤ワインを注いでいる清森を横目で見た。

「考えてみたら、離婚一周年というのはなかなか特別な日だから、一緒に祝うのもいいかなと思ってね」

二人のグラスにワインを注いだ後、彼はコルク栓をワインボトルに戻した。

そしてワイングラスを軽く持ち上げ、「彼女、乾杯しよう」

真雪は微笑み、ワイングラスを持ち上げて彼のグラスと軽く触れ合わせた。グラスが澄んだ音を立てた。

ワインを一口飲んだ後、真雪は耳元で急に真剣な口調になった清森の質問を聞いた。「真雪、この一年はどうだった?良かった?」

真雪はデザートフォークを手に取り、マンゴームースを小さく一切れ口に運んだ。

マンゴーの甘い香りが口の中に広がり、真雪は清森の質問を心の中で何度も考えた……この一年は良かったのだろうか?

しばらくして、彼女はゆっくりと赤い唇を開き、問い返した。「本当のことが聞きたい?」

「うん」

「父が亡くなって、あなたと離婚した時期は本当に辛かった。辛すぎて……今でも思い出したくないくらい」

清森は横目で見ると、隣の真雪の美しい眉が深く寄せられていた。

きっと、あの時期は本当に苦しく、思い出したくもない時間だったのだろう。

彼は長い人差し指を真雪の眉間に伸ばし、温かい指先で優しく彼女の眉をなでて、寄せられた眉を解いた。

「ごめん、あの時は僕が君のそばにいるべきだった」

彼の人生で最も間違った決断は、おそらく真雪が申し出た離婚の要求を受け入れたことだった。

そのような愚かな決断のせいで、彼は真雪にさらに深い傷を与えてしまったのだ。

真雪はまたマンゴームースを小さく一切れ口に運んだ。ムースの甘美な味わいが、心の苦さを徐々に追い払っていった。