第300章:明日、宣予の本は各書店から撤去される

上野社長は彼女の言葉を鼻で笑った。「好きにしろ」言い終わると、彼はソファから立ち上がり、デスクに歩み寄って内線電話を押し、指示した。「夏目さんを外に案内しなさい」

しばらくすると、上野社長の秘書が警備員を連れてオフィスに入り、魂が抜けたような夏目宣予をオフィスから連れ出した。

夏目宣予の新刊発売日に、叢雲産業グループが彼女との契約を解除するというニュースが流れ、皆が衝撃を受けた。

後にネットユーザーが暴露したところによると、古川真雪が取締役会で夏目宣予との契約解除を提案し、全取締役が満場一致で賛成したという。叢雲産業グループの会長である久保清森も賛成票を投じたとのことだった。

久保清森が真雪とショッピングに出かけた際、二人はショッピングモールで記者たちに行く手を阻まれた。

メディアはまだ衝撃から立ち直れておらず、二人に質問を浴びせかけた。

「古川様、あなたは私怨で夏目宣予との契約解除を提案したのですか?」

「久保会長、今回の契約解除はあなたと夏目宣予さんの長年の友情を壊すことになりませんか?」

「久保会長、夏目宣予が出版した小説はあなたと彼女の間の実話なのでしょうか?」

「古川様、あなたは本当に夏目宣予と久保会長の間の感情に割り込んだのですか?」

唐田秘書と警備員たちが記者たちを遠ざけ、真雪と清森をすばやくショッピングモールから脱出させた。

予定していたショッピングと食事の計画は、やむを得ずキャンセルとなった。

唐田秘書が二人を送る途中、清森は自宅からの電話を受け、白川悠芸が二人そろって帰宅するよう求めていた。

清森は真雪に確認してから、悠芸に二人が今から帰宅すると返答した。

悠芸は夏目宣予の小説の中では、書家の家系出身の貴族の娘で、上野雅琴という名前の優しく礼儀正しい女性として描かれていた。

主人公の鎌田敬賢が初めてヒロインの中村暖月を母親に会わせた時、雅琴は暖月に非常に友好的な態度を示し、ほのかに暖月への好意を表していた。

しかし後に、陸橋純嘉に惑わされ、暖月の家柄が貧しく敬賢にふさわしくないと考え、二人の仲を引き裂き、敬賢に暖月との別れを強いたのだった。

清森と真雪が久保家に到着すると、悠芸はリビングのソファに座って『たとえ魚が水をやめても』を読んでいた。