【古川様、今朝家でカップケーキを焼いたので、特別にあなたに持ってきました。気に入っていただければ嬉しいです。】
古川真雪は冷蔵庫を開けると、空っぽの冷蔵庫の中に透明なプラスチック容器が置かれていた。容器の中には八個の美しく美味しそうなカップケーキが並んでいた。
彼女はケーキをしばらく見つめて考え込んだ後、手を伸ばして慎重に容器を取り出し、それを抱えてキッチンを出て、ダイニングを通り過ぎ、玄関で靴を履き替えてから家を出た。
彼女はエレベーターで17階に上がり、降りてから久保清森の家のドアまで歩いていき、ドアベルを押した。
清森は家で夕食の準備を終え、ちょうど食べようとしていたとき、突然ドアベルの音が聞こえた。
彼は手に持っていた食器を置き、ダイニングテーブルから立ち上がってドアに向かい、モニターを見ると外に立っている真雪の姿が見えた。彼の顔に浮かんだ驚きはすぐに喜びに変わった。
彼はドアを開け、意外そうに真雪を見つめながら笑顔で尋ねた。「真雪、どうしたの?」
真雪は手に持っているカップケーキの入った容器を少し持ち上げて、「お手伝いさんがカップケーキを用意してくれたから、あなたと一緒に食べようと思って」と言った。
清森の深い黒い瞳に愛情のこもった笑みが浮かび、彼は体を横に寄せて真雪を招き入れた。「入って。夕食は食べた?」
真雪はカップケーキの容器を抱えながら彼の横を通って家に入り、玄関で靴を脱ぎながら答えた。「まだ」
「ちょうど夕食の準備ができたところだから、一緒に食べよう」
「うん、いいわ」
二人は前後してキッチンに入り、真雪はまずカップケーキを冷蔵庫に入れてから、シンクで手を洗った。
清森はダイニングテーブルにもう一組の食器を追加し、向かい側の席に置いた。
真雪は手を洗い終えてダイニングテーブルに来ると、清森の向かいに座り、テーブルの上の四品の料理とスープを見渡して冗談めかして言った。「また美味しいものが食べられそうね」
清森は手でエビの殻を剥きながら冗談めかして言った。「だから早く僕と結婚すれば、毎日美味しいものが食べられるよ」
「男性は結婚前と結婚後で大きく変わるって聞くわ。結婚前のこういう甘い言葉は信じられないわ」