第380章:今日はあなたの誕生日

彼女は少し顔を横に向けると、隣には久保清森の姿はもうなかった。しばらくして、彼女はシーツで自分の裸体を包み込み、ベッドから降りて浴室へと歩いていき、シャワーを浴び、身支度を整えた。

昨日着ていた服は書斎に置いてきてしまったため、彼女は清森のバスローブを着るしかなかった。

ゆったりとしたバスローブは彼女の体をより一層小さく見せていた。全身鏡の前で腰のところで結び目を作ってから、彼女は浴室を出た。

清森はキッチンで古川真雪の朝食を準備していた。ふと顔を上げると、彼女がゆっくりとキッチンに入ってくる姿が目に入り、彼の唇の端には自然と優しい笑みが浮かんだ。

「真雪、おはよう」

「おはよう」

真雪はウォーターサーバーの前でぬるま湯を一杯注ぎ、ガラスのコップを手に持ってキッチンカウンターへ向かうと、清森が長寿麺を皿に盛りつけているところだった。

清森は手の動きを一瞬止め、少し体を傾けて、真雪のきれいな額に優しくキスをした。

「昨夜はよく眠れた?」

「うん、まあまあね」

「長寿麺を用意したよ。料理の腕はお父さんほど良くないかもしれないけど、お父さんは以前、君の誕生日には必ず長寿麺を用意するようにと言っていたからね」

真雪と結婚する前のある日、古川父は直接清森のオフィスを訪ねてきた。

二人は長い時間座って話し合い、その会話から古川父の真雪への愛情と、彼女が嫁ぐことへの名残惜しさが伝わってきた。

話の最後に、古川父は清森に、真雪の誕生日には必ず美味しい長寿麺を食べさせるようにと念を押した。

その後、真雪が嫁いだ後も、古川父は自ら長寿麺を作り、彼らの家まで届けていた。

清森が父親のことを話すと、真雪の顔の笑顔はわずかに引き締まり、彼女を宝物のように大切にしてくれたあの父親を懐かしく思った。

清森は彼女の微妙な感情の変化を感じ取り、手を伸ばして優しく彼女の頭を撫でた。「おバカさん、元気出して。今日は君の誕生日なんだからね」

そう言うと、彼女の手を取ってダイニングテーブルへと案内した。

「何か飲み物は欲しい?」

真雪は首を振り、少し顔を上げてコップのぬるま湯を一気に飲み干した。

一方、清森はキッチンカウンターに戻り、そこに置いてあった皿をテーブルに運び、長寿麺と箸、スープスプーンを真雪の前に並べた。