第55章 ボス!恋敵がいます!しかも一人じゃない!

陸田謹言は表情を淡々としたまま、完全に黙認する態度を取っていた。

「結構です」鈴木瑠璃はきっぱりと断った。

「女神様!」

聞き覚えのある声が聞こえ、陸田花子が純血種の馬に乗って駆けてきた。手綱を引くと、軽やかに馬から飛び降り、まるで空の太陽のように熱心に声をかけた。「女神様、私が選んであげたわ。この馬をあなたに!」

瑠璃は前に進み、艶やかな馬のたてがみを撫でた。

花子のこの馬は確かに悪くない……

ふと島井凛音の表情に目をやると、この子は自分が選んだ馬の手綱をしっかりと握り、まつげを垂れて、見捨てられたような不満げな顔をしていた。

瑠璃は心が和らいだ。どの馬を選んでも彼女にとっては大差ないのだから、弟を失望させないようにしよう。

彼女は「低い・小さい・醜い」馬を指さし、断固とした口調で言った。「私はこの馬がいいわ!」

その言葉を聞いて、凛音は驚いて顔を上げ、頭上の暗雲が一掃され、目には無数の星が集まったかのような輝きが……

一方、花子は大きなショックを受け、頭の毛が元気なく垂れ下がった。「お嫂…女神様、あなた、あなた私の言うことを聞かないなんて、負けても私が警告しなかったって言わないでよ!」

楚田汐はもともと自慢しに来ただけで、目的を達成したと思うと、満足げに陸田謹言の手を引いて立ち去った。

その場にいる大半は独身だったが、数組のカップルもいて、馬場で一頭の馬に二人で乗り、のんびりと景色を眺めていた。

謹言と汐もその中にいて、べたべたと愛を交わす光景が、現場の多くの独身者たちを刺激していた。

皆、瑠璃が三角関係の中で惨めに敗退した一人だと知っており、彼女を見る目には嘆き、同情、そして他人の不幸を喜ぶ気持ちが混ざっていた。

「美人だからって何なの?男の心を掴めなければ、結局無駄じゃない?」

「本当に演技上手ね、あの何でもないふりをした顔、きっと心の中はどれだけ辛いことか!」

「あれ、島村様がどうして彼女のところに…」

女性たちが集まって噂話をしていると、突然、島村少臣が瑠璃の側に寄り、熱心に彼女の周りをうろつき、顔には春風のような優しい笑みを浮かべているのが見えた。

少臣は生まれつき遊び人だが、性格は冷たいタイプで、気に入った女性以外には、たとえ国一番の美女でも一瞥もくれないことで知られていた。