鈴木瑠璃は家に帰ると、プールで一泳ぎし、気持ちよくお風呂に入った。
髪を拭いていると、リビングのレトロな固定電話が鳴り始めた。
「もしもし」瑠璃は手近に受話器を取り、耳に当てた。
「……なんでお前なんだ!」向こう側の少年の声は少し驚いた様子で、一瞬間を置いて、「兄貴は?兄貴に用があるんだ」
「ああ、彼はいないわ」瑠璃は言うと電話を切ろうとした。
「待って!俺は……お前でもいいけど……」
陸田花子のぞんざいな口調を聞きながら、瑠璃はまったく不機嫌な様子を見せず、美しい爪を撫でながら、「何の用?花田さん?」
「お前……」花子は深呼吸をして、歯を食いしばって言った。「俺はもう十七歳の男だぞ!そんな呼び方やめてくれないか?」
「用件だけ言って、忙しいの」瑠璃は無表情で言った。
花子は陸田家の三兄弟の中で一番下で、気性が荒く、わがままで、よく理由もなく他人に怒りをぶつけ、まるで乳離れしていない赤ん坊のようで、両親に甘やかされていた。
陸田生は一生女好きで、最大の願いは娘が欲しいということだったので、末っ子にこんな名前をつけたのだ。花子は物心ついてから、自分の名前にずっとコンプレックスを抱いていた。
「兄貴の書斎の引き出しに、手紙が一通あるんだ……探してくれないか」花子はもごもごと言った。
「ちょっと見てみるわ」
瑠璃は受話器を脇に置き、階段を上って謹言の書斎へ向かった。机の引き出しには確かにピンク色の手紙が入っていた。
十七歳という年齢は、青春の真っただ中で、中身は大体想像がついた。
清々しい香水の香りがする手紙を持って、瑠璃が階下に戻ろうとしたとき、ふと引き出しに静かに横たわっているダイヤの指輪に目が留まった。
この指輪は、彼女と謹言の婚約指輪だった。
瑠璃は右手を伸ばし、薬指からその指輪を外し、謹言の机の上に置いてから、階下へ向かった。
わずか3分の間に、花子はじっと座っていられなくなっていた。瑠璃が受話器を取ると、彼はすぐに詰問した。「なんでそんなに時間かかるんだ?まさか中身を見たんじゃないだろうな!」
「うん、見たわよ」
瑠璃は手紙を持ちながら、わざと彼をからかった。
「お前!お前お前お前……なんて嫌な奴なんだ、兄貴がお前のこと好きじゃないのも当然だよ、やっぱり楚田姉さんの方がいいよ!」花子は極度の恥ずかしさから、思わず言葉を選ばなくなった。
「そうね、あなたの楚田姉さんは本当に素晴らしいわね、何も求めずに陸田謹言の側に小三として居続けるなんて」
「……最初からお前みたいな女が必死になって陸田家に嫁ぎたがったんだろ。兄貴と楚田姉さんこそ本当の愛なんだ!」
瑠璃はゆっくりと脅した。「手紙はいらないの?」
花子:「……」
その時、城南区のある邸宅で。
末っ子が電話を抱えて、目が真っ赤になり、泣きそうになっているのを見て、賀月は心配で仕方なく、フルーツの盛り合わせを持って近づいた。「花子、誰と電話してるの?」
濃い茶色のソファには、高価な服を着た少年がクッションを抱えていた。眉は長く、顔立ちは整っており、唇は鮮やかな赤色で、人を見る目には傲慢な自信があった。
花子はイライラして髪をかき回した。「兄貴の側にいるあの女だよ、うんざりだ!」
相手が瑠璃だと聞いて、賀月の表情も変わった。陸田家では、姑と嫁の関係はずっと緊張していて、ちょっとしたことで爆発しそうだった。もし義母が彼女を気に入っていなかったら、賀月は絶対に瑠璃を家に入れなかっただろう。
家柄や容姿とは関係なく、単純に彼女のことが好きになれなかった。
女中が恐る恐る近づいて報告した。「奥様、次男様がいらっしゃいました」