彼はあまりにも目立っていた。背が高く、清潔感のある少し怠惰な雰囲気を持ち、前髪は少し乱れていて、無表情に人混みに紛れて階下へと歩いていた。
鈴木瑠璃の視線に気づいたのか、彼は顔を向けてこちらを見た。
次の瞬間、唇を引き締め、微笑みを浮かべると、足取りを緩め、彼女に向かってのんびりと歩いてきた。
「野さん」小山星河はくすりと笑った。「日陰で待ってればいいのに。日に焼けるよ」
瑠璃は立ち上がり、スマホをポケットに入れた。「日焼け止め塗ってるから」
星河は一瞬言葉を失い、ゆっくりと目を開けて彼女の露出した肌を眺め、目尻を少し上げた。「確かに、すごく白いね」
契約書にサインする場所は、学校近くの高級カフェに設定されていた。
瑠璃は会社のスタッフと一緒に先にカフェに到着し、その後歩いて学校に来たのだった。800メートルの距離はそれほど遠くなく、星河と一緒に歩いて戻ることは十分可能だった。
しかし、彼女は非常に重要な問題を見落としていた。
「小山星河!小山星河!」
「きゃあああ!見えた!」
殺到する女子学生たちが、決して狭くない道を水も漏らさぬほど埋め尽くし、まるで大規模なファン追っかけ現場のような状態だった。
瑠璃は冷や汗をかき、本当に予想外だった。「あなた、そんなに人気あるの?」
星河は唇を引き締め、何も言わなかった。
瑠璃は目の下の肌を少し掻き、驚きの中にも少し誇らしさを感じた。
この弟くんはデビューする前からこんなに人気があるなんて、芸能界に入ったらどうなるの?業界の半分は彼のものになっちゃうよ!
小説は嘘をついていなかった、少しも誇張していなかった……
「野さん!河さん——」
横から、利田均がどこからか自転車を押してきた。まるで予想していたかのように、「自転車で行った方がいいよ。そうしないと彼女たちにまだ追いかけられるぞ」
この「河」を狂ったように追いかける女の子たちに、彼はもう慣れっこだった。
「いい友達だな」星河は彼とこぶしを軽くぶつけ合わせ、自転車またがり、長い脚で地面を支えた。
周りの人を気にせず、ティッシュでサドルを拭き、顔を少し傾けて笑った。「乗って、野さん」
女の子たちの興奮した悲鳴の中、瑠璃はそれ以上考えず、後ろの席に座った。
しかし自転車は動かなかった。