第167章 腹黒い子犬

丁野遥は黙って口を閉じた。

いとこの気性はいいとは言えない。これ以上刺激したら、プレゼント選びに付き合ってくれなくなるかもしれない。

スポーツカーが金融街を出ると、小山星河は窓外の景色を眺めながら言った。「彼女のお兄さんの誕生日はいつ?」

遥は考えることなく答えた。「明後日よ、どうして?」

星河は「一緒に行くよ」と言った。

「……!!」遥は思いがけない申し出に驚いた。

このやんちゃ坊主はとても怠け者で、従姉の自分にも全く敬意を示さないのに、まして誕生日パーティーなんかに付き合ってくれるなんて。

今回は西から太陽が昇ったのだろうか?

ふと思った。もしかして瑠璃も来るからじゃない?

遥はいとこの姉として、とても切なくなった……

あっという間に、鈴木妄年の誕生日当日となり、場所は彼の所有する美しい島だった。

島井凛音という弟が海を見たいとごねたので、鈴木瑠璃は連れて行ってあげても良いかなと思った。ところが、この子は船に乗った途端に船酔いしてしまった。

「大丈夫?凛音、これを嗅いでみて。少しは良くなるはずよ」瑠璃は小さな瓶を彼に渡した。

瓶の中には新鮮な生姜の小片が入っていた。このような状況に備えて、事前に準備しておいて良かった。

凛音は来る前に酔い止めを飲んでいたはずなのに、こんなに反応するなんておかしいな?

「お姉ちゃん、気持ち悪い……」少年は白い指で彼女の袖をつかみ、目尻を赤らめ、鼻声で甘えた。

瑠璃は「どこが気持ち悪いの?吐きそう?」と尋ねた。

凛音は困ったように彼女を見つめ、頭を弱々しく彼女の肩に預けた。「頭がくらくらする……」

瑠璃は仕方なく、片手で彼の頭を押さえた。「はいはい、大丈夫よ、もうすぐ着くから」

この子は自分が船酔いすることを知っていながら、どうしてもついてきたがった。何を考えているのかしら!

凛音は身長が少し伸びていて、彼女の肩に顔を預けるには少し前かがみになる必要があり、その姿勢はあまり快適ではなさそうだったが、彼の表情はとても満足そうだった。

瑠璃は彼の口角が上がっていることに気づかず、双眼鏡を鼻に架けて、尖った島々の一群を見つけた。「着いたわ!」

「なんでこんなに早いんだろう」凛音は小声でつぶやいた。