クールな男は明らかに大きな場面を見慣れた人物で、二人の男が彼の目の前で抱き合い耳打ちしても、彼は少しも表情を変えなかった。
「イケメン、どこで働いてるの?連絡先教えてよ。後で病院に行ってレントゲン撮るから、どこか怪我してたら、医療費払ってもらうからね。」
小山星河は怒りで笑いが出た。虎口で彼女の頬を挟み、唇を尖らせて彼を見上げるように強いた。「鈴木瑠璃、俺が死んだと思ってるのか?」
岩田悦は恐喝されたと思い、冷たい表情で財布を取り出し、中から名刺を一枚取り出して渡した。
「これが私の連絡先です。もし本当にどこかを怪我されたのであれば、医療費は補償します。」
瑠璃が手を伸ばして受け取ろうとしたが、星河に先に取られてしまい、不満そうに文句を言った。「私にくれればいいのに。」
「お前にやって、男を誘って俺のライバルにするつもりか?」
星河は男の遠ざかる背中をちらりと見て、名刺をゴミ箱に捨てた。
瑠璃は唇を曲げて笑った。「まあいいや。」
クールな男が彼女に名刺を渡した時、彼女はちらりと見て、すでに名前と電話番号を記憶していた。
…
また島井凛音が病院で注射を受ける日がやってきた。
「お姉ちゃん、見ちゃダメだよ!」凛音は光を含んだ潤んだ目をまばたきさせ、ためらいがちにドアの外の瑠璃を見つめた。
「見ないよ!」瑠璃は急いで手を挙げ、百パーセント冤罪だと主張した。
彼女は女のスケベじゃない!
「あなた……もっと遠くに行って!」
彼はまだ病院で注射を受ける恥ずかしさを克服できなかった。ましてやお姉ちゃんの前では。
瑠璃は口角を引きつらせた。「わかったわかった……もっと遠くに行くよ。あなたは漢方科の外で私を待っていて!」
彼女は最近ホルモンバランスが少し乱れていたので、せっかく病院に来たのだから、ついでに診察を受けることにした!
10分間並んで、彼女の番になって中に入った。
「先生……」
瑠璃の口から出かけた言葉は、白衣を着た岩田悦を見た瞬間、喉に詰まった。
診察室の中で、表情の冷たい男が片手をポケットに入れ、机の後ろの椅子に斜めにもたれかかっていた。
身に着けた白衣は極めて清潔で、真新しく、手入れの行き届いた指が銀色のペンを弄んでいた。まるで重度の潔癖症を持つ変態殺人鬼のようだった。
瑠璃:「あの、岩田先生?」