丁野遥は聞いて、もごもごと言った。「瑠璃……あなた、まだ陸田謹言に気持ちがあるの?」
離婚してからもうこんなに経ったのに、しかもそばにはイケメン過ぎる執事がいて、追いかけてくる人は男神だし彼女の従弟だし、羨ましくて死にそう!
瑠璃はどうしてまだあの「死別型婚姻」から抜け出せないの?
鈴木瑠璃は無造作に髪の毛を指で弄びながら、椅子に身を預けて言った。「何考えてるの?私はゴールデンウィークにイタリアに出張だから、海上パーティーなんて参加しないわよ!」
東京からイタリアまで飛行機で約10時間、8000キロを横断する。これで十分遠くに逃げられるでしょう!
「そう……」遥はため息をついた。
海上パーティーといえば、ビキニでしょ!
以前は謹言が清楚な感じが好きだったから、瑠璃はセクシーな服を着なかった。肩さえほとんど出さず、いい体型を無駄にしていた。
でも今は瑠璃も目が覚めて、センスがどんどん良くなって、顔もどんどん美しくなって、キャミソールワンピースを次々と着るようになった。もし今回のパーティーに参加してくれたら、きっとイケメンたちに囲まれるはず!
陸田謹言の顔はきっと青ざめるだろうね!
そんな光景が見られないのは、ちょっと残念だな……
瑠璃は遥の腹の内を知らず、指一本で箱の中のネックレスを引っ掛け、物憂げな目で眺めていた。
小説の仕組みが不可逆だとしても、決定権は自分にある。もし彼女が主人公を選ばなかったら、何が起こるだろう?
何事もなく平穏に過ぎるのか、それとも……現実世界に戻るのか?
瑠璃は自分の心に浮かんだ考えに驚いた。
もし彼女の心配が本当なら、それは厄介なことだ。小説の中では彼らは紙の上の人物だが、今の彼女にとっては生きて存在している。
誰かに恋心を抱いたとして、もし去る日が来たら、それは生き別れや死に別れとほとんど変わらないのでは?
ああ、多くの美しい花の中を通り抜け、イケメンは口説かないと損よね〜
…
成田国際空港からイタリアのローマまで飛んで、現地時間の午後5時になっていた。
木村佑のアシスタントが事前にホテルを予約していた。豪華絢爛なバロック様式の宮殿のような建物だ。
澄んだ水が足元を流れ、通りには馬車と歩行者が優雅にゆったりと行き交い、自由な雰囲気が濃厚な都市だった。